「想いの軌跡1975-2012」を読了
「想いの軌跡1975-2012」(塩野七生著)を読了。過去に書き溜めたエッセイ集だ。
読んでいて、なにかと心地が良い。「鴎外の書き遺さなかったこと」では、コンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)など、大昔に読んだ本の記憶が蘇ってくるからだ。
トルコのスルタン・マホメッド二世が宰相カリル・パシャに対し「あの街をください」と言うシーンをずいぶん昔に読んだ。まるで映画のワンシーンのようだった。
このシーンの解説がされているなんて、非常に興味深い。世界的な権威のある歴史学者ギボンとバービンゲル、ラシンマン の記述を比較しながら、著者自身の目で再考するなんてところが垣間見れて面白い。
「祝辞」も良い。防衛大学校の卒業式のスピーチらしいが、力強くてかっこ良い。
「まずはじめは、一級の武将はイコール一級のシビリアンである、ということです。シビリアンであらねばならない、と言っているのではありません。一級のシビリアンでなければ、戦場でも勝てないからです。
では、なぜ一級のミリタリーは一級のシビリアンでもあるのか。それは、戦争でも戦闘でも、勝利を収めるということが、実にさまざまな要素の結合であるからなのです。勇敢であるだけでは充分でない。兵士たちを従いてこさせる人望があっても、それだけでは充分ではない。
古代ロ−マの戦略単位は、二万から二万五千の兵士たちで構成された二箇軍団でした。
これは、執政官一人で指揮したところから執政官軍団と呼ばれていました。ところがこの二万でも大変なのに、ハンニバルやスキピオ級の最高司令官ともなると、この二倍は率いなくてはならなかったのです。それを彼らは、二十代でやったのです。アレクサンダー大王も同じでしたが。
では彼らは、どういうことに気を配る必要があったのか。」
どうです、かっこよすぎませんか。
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